書籍紹介『苦しかったときの話をしようか』

 

名著。

 

 

 

と、率直に感じました。

 

 

 

あ、今日は長文です。

のんびりと時間がある時にお読みくださいね。

 

 

 

大学生や高校生の方にオススメの本です。

 

いや、もっと広くてもいいですね。

ビジネスパーソンや、私のような事業主、

あるいは教育を担う人等、多くの人に対してお勧めします。

 

 

語彙力のある中学生もぜひ読んでほしい。

 

 

著者は、森岡毅(もりおかつよし)氏。

 

 

あのUSJをV字回復させた日本屈指のマーケターです。

 

数年前に『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか』を拝読して以来、

密かなファンです。

 

 

 

この本は、そのようなマーケティングのプロが、

これから社会に旅たつ娘さんのために書き溜めた

「働くことの本質」を説いた本です。

 

 

その中で、自分のキャリアをどう捉え、

どう構築していくかについて著者の持論が展開されています。

 

少々難解な表現があったり、

予備知識がないと理解できない箇所もあるのですが、

これくらいは高校生なら読めて欲しい。

 

まあ、分からないところは飛ばしてもいいから、

中学生にも読んでほしいです。

 

 

 

ここでは、そのうちのいくつかを記しますね。

パースペクティブを拡げよう

 

 

perspective(パースペクティブ)。

 

 

 

 

辞書的な意味では、「視点・観点・(将来の)見通し」と訳される単語ですが、

この本の中では「自分が認識できる範囲」という意味で使っています。

 

自分が見ている世界の範囲と捉えればいいでしょうか。

 

そして、知識や体験を積むことでパースペクティブは広げることができる。

 

一方で「人間は自分が知っている世界の外を認識することができない」と。

 

つまり、知らなければ選択することも、

その世界で生きることもできないのです。

 

 

 

その例として、

資本主義社会において

資本家と労働者の2種類がいるにも関わらず、

ほとんどの人が

「サラリーマン・パースペクティブの中で人生を終えることになる」

と論じます。

 

 

なるほど。

 

私は、塾の先生の15年のキャリアの中で、

将来の職業を考える際あれやこれやと悩みながらも、

全ての子がなんらかの「労働者」になることを選択し、

その後を見通しても資本家になることを目指す子を知りません。

 

 

なぜでしょう?

 

10代や20代のうちから資本家を目指すことが否定されるのなら、

資本主義社会とは言えないはずです。

 

 

それはきっと、私たち大人も含めて

ほとんどの人がその世界を知らないから。

 

学校教育の中でも伝えません。

 

恥ずかしながら、やはり私もその世界を知りません。

 

けれど、資本主義の世界である以上、資本家は一定数存在し、

株式制度があることから誰でも資本家になる道は存在します。

 

詳しくは書籍に譲りますが、知らないのであれば、

そりゃあ、選択肢に入ることもない。

 

 

 

いや、決して資本家になることが正しいという話ではありません。

 

「そういう選択肢まで俎上に載せて、自分の道を選択しているか?」

という話です。

 

そういう資本家の世界までパースペクティブを

広げるだけの知識を持っているどうか、という話です。

 

 

勉強とは自分の視点を上に上げ、

パースペクティブを広げる作業とも言えるでしょう。

 

これだけでも勉強する意味は大いにあると言えます。

 

私ももっともっと広げようと思います。

 

 

 

苦しかった時の話をしようか

 

この本は全6章から構成され、

第4章までは社会のとらえ方や、

自分のキャリアの積み上げ方、

自分をマーケティングする際の考え方が綴られています。

 

それらも十二分に読み応えがあるのですが、

終盤の5章・6章が秀逸すぎます。

 

だから、この本のタイトルにもなっているのでしょう。

 

父親が娘に自分の「苦しかった時の話」を語るのです。

 

私にとってはもう共感することだらけで、

目に涙を浮かべながら読んだことを告白します。

 

 

その中から、ここでは一点だけご紹介します。

 

 

 

「Congruency(信念と行動の一致)の大切さ」です。

 

 

 

著者はサラリーマンとして仕事を担当する中で、

「自分が信じていないものを人に信じさせなければならない断絶」を

味わったそうです。

 

つまり、自分がいいと思わない商品を売ることになったのです。

 

すると、そこから派生する全ての行動が、

自分に嘘をつくことになります。

 

それがどんなに辛いことか。

 

結局、その仕事は失敗に終わり、自分の評価も落ち、

部下たちに辛い思いをさせたことを悔いる結果となりました。

 

 

 

この気持ち、とてもよく分かります。

 

自分が納得していないことを組織の中でやらざるを得ない苦痛。

 

そのエネルギーの損失は甚だしい。

 朝、布団から起き上がれないのも当然です。

 

 

 

今、私は小さな塾の塾長という立場で

比較的好きなことをさせてもらっています。

 

その意味では、恵まれた環境にいるかもしれない。

 

 

 

けれど、最近で言うと、

プロジェクトを一つ潰しています。

 

それは自分が納得できなかったから。

 自分が納得できないことにうちの塾生を巻き込むわけにはいかない。

 そう思って潰しました。

 

今では、それは正しかったと思っています。

 

 

 

もちろん組織の中にいたら、

自分の意向を全て通せるわけがありません。

 

 

 

けれど、自分がなぜその世界や会社、学校に飛び込んだのか。

 

せめて、自分の方向性については徹底的に納得しましょう。

自分が納得していなければそれは不幸を招きます。

人生をかけて、自分に嘘をつき続けるのです。

 

これは辛い。

 

だから、中高生の皆さんは、自分でよくよく考え悩んでください。

 

そして、自分で納得した方向に進んでください。

 

逆に、自分が全てに納得しながら動くときは、ものすごいパワーが出ますからね。

 

 

 

 

 

「終わりに」を読んで

 

「終わりに」にも素晴らしかったですね。

 

著者の日本社会に対するメッセージが綴られているのですが、

私の思いが代弁されているようで、

「ああ、自分が考えていることは間違えていなかった」と

励みになりました。

 

 

その一部を抜粋します。

 

 

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p.300より

「日本人はもっと強くならなければならない。これは次世代の若者に限定した話ではないのだ。むしろ社会の主力を構成している我々ことが、”大人”が、もっと強くならなければならない。日本人の一人一人がより高い能力を身につけて、自己実現を通して社会を活性化させていく、そのサイクルを加速させねばもう間に合わない。我々は今、豊かだった日本を次世代に託せるかどうかの瀬戸際に立っている。

 

かつて世界経済の16%を占めた日本は、空白と停滞の”平成30年間”を経て、成長する世界から取り残され、今では僅か6%の存在に成り果てた。……さらに少子高齢化が進む中で、事態は加速度的に悪化だろう。

 

(中略)

 

日本が生き残る道は、社会を活性化させる人材を輩出する構造を早く強化することだ。遠回りに見えて、実は教育に置くこの一石こそが日本再生の”重心”であると私は確信している。」

 

(引用終わり)

 

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街の塾の先生にできることはやはり限定的ですが、

教育の一端を担う以上、自分が関わる生徒に対し

この責任を負っていると自覚しています。

 

その上で、自分が信じる塾の形を作っているつもりです。

 

私が関わらせてもらっている西野亮廣さんの講演会や、

知のスレッジハンマー講演会in広島、その他のプロジェクトも

この文脈の中でご理解いただければ幸いです。

 

 

 

この本の詳しい中身が知りたい方は、是非是非書店でお買い求めください。

 

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ほら。

 

別に僕が森岡さんを宣伝する義理なんかありませんが、

自分が納得できたものは素直にお勧めできますね。

 


コメント: 2 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    森田恭平の母 (金曜日, 07 6月 2019)

    もし、誰も読まなくなったら、貸して下さい。
    まさに今日、アマゾンで買おうとして思いとどまった本です。
    びっくりしました。

    先生と本の選択にてますね。

  • #2

    宮脇 (金曜日, 07 6月 2019 23:32)

    森田さん、コメントありがとうございます!
    このブログ、あまりコメントがつかないものですから、
    嬉しいです。
    それにしてもさすがお母さんです。
    お目が高いですね。
    でも、この本はお貸しできないです。
    なぜなら僕の赤線やらメモ書きが結構びっしり・・・。
    アマゾンで買って損はしない本ですから、そちらをお勧めしますね。