「テストでご褒美」が逆効果になる理由―子どもの本当のやる気を育てるには

目次

1. 報酬制度について考える

こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。

最近、いくつかの塾で「定期テストで高得点を取るとポイントが貯まり、授業料が安くなる」といった方策を見聞きすることがあります。

子どもたちのやる気を引き出そう、親御さんにも喜んでもらおうという思いから生まれた仕組みなのでしょうね。

 

ただ、教育心理学の観点から考えると、こうした報酬制度には注意すべき点があるのです。

今日はそのお話をさせてください。

2. アンダーマイニング効果という心理現象

心理学では「アンダーマイニング効果」というものが知られています。

アンダーというのは「下」、マイニングというのは「掘る」という意味ですね。

つまり、地盤を崩すように下を掘ってしまう、そんなイメージです。

 

どういうことかと言うと、子どもたちはそもそも勉強の楽しさを一定程度は知っているものなんですよね。

勉強が楽しいから勉強する、学習内容に興味があるから勉強に勤しむ。

このモチベーションのあり方を「内的動機」あるいは「内的調整」と言って、モチベーションの中では最高峰に位置づけられるものです。

単純に楽しいからやる。これが一番強い動機なんです。

 

ところが、金銭的な報酬を与えてしまうと、せっかく楽しいと思って勉強しているところに、外的な要因がその内的な欲求を崩していってしまうんですね。

しかも一度報酬を得てしまうと、2度目はその効果が薄くなることも知られていますし、そのご褒美的な効果がなくなると、残念なことに内から湧き出る興味関心まで薄れてしまうのです。

3. Moveでの実践―ある生徒の変化

ですので、私はご家庭でも「テストの点数でご褒美をあげる」とか「お小遣いを増やす」といったことは、基本的にはやめてくださいとお伝えしています。

Moveでも、テストの得点で何かご褒美的なものをあげるということはしていません。

勉強そのものを楽しんでほしいという思いで、あえて何もしていないんです。

もちろん、点数が上がったり努力している事実に対して、しっかりと褒めてあげること、承認することは大事ですよ。

でも、それを「報酬」という形では渡していないのです。

 

実は数ヶ月ほど前に、ある高校1年生が中学生の後輩たちに向けてスピーチをしてくれたことがありました。

彼はこう語ってくれたんです。

「Moveで勉強を頑張っていると、勉強がとても楽しいと思えてくる。僕がMoveに入って勉強が楽しいと思えた時から、偏差値がポンと7くらい上がった」と。

この言葉を聞いたとき、私は本当に嬉しかったですね。

まさに内的動機が育った証だと思いました。 

4. 承認の力こそが最強の後押し

ご家庭でも、ぜひこのアンダーマイニング効果という考え方を知っておいていただけたらと思います。

子どもたちが勉強を頑張る一番のモチベーションは、勉強を楽しいと思うことなんです。

お小遣いをあげたり報酬をあげたりすることは、その邪魔になってしまうんですよね。

 

「褒めるだけ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも実は、自分の内側から勉強を楽しいと思う動機の次に強いのが、この承認の力なのです。

親御さんが認めてくれているという思いは、子どもたちにとって何よりも強い後押しになります。

 

お子さんが一生懸命やっているその努力の姿勢を認めてあげてください。

少しでも得点が上がったり、成長が見られたら、それをきちんと評価してあげてください。

その言葉こそが、何よりの報酬になるのです。

どうぞよろしくお願いいたします。


進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。