【インタビュー記事④】卒業後の進路〜外航船で年収2000万円も夢じゃない!?どんな人が商船高専に向いているか〜

目次

画像はAIによって生成されたものです。実際の様子とは異なります。

1. 夢のある船乗りの世界

こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。

広島商船高専について4回にわたってお伝えしてきた最終回は、卒業後の進路と、どんな人がこの道に向いているのかについてお話しします。

Hくんから聞いた話は、正直私も驚くことばかりでした。

特に収入面については、一般的なサラリーマンでは到底考えられない世界が広がっていたのです。

「先生、本当にすごい世界なんです」と目を輝かせて話すHくん。

彼の将来への確信に満ちた表情を見ていると、この進路選択が間違いなく正解だったと改めて確信しました。

2. 外航船と内航船〜選択肢の豊富さ〜

まず、船乗りの世界には大きく分けて「外航船」と「内航船」があります。外航船は海外航路を運航する船で、内航船は日本国内の航路を運航する船です。

Hくんが最も興味を持っているのは外航船の世界。

「給料だけを取りに行くのだったら、外航船がすごく稼げるという話を聞きます」と話してくれました。

実際、調査によると外航船員の平均年収は約920万円。

30代前半で1000万円を超える人も珍しくなく、船長クラスになると年収1500万円以上、さらに成功すれば2000万円を超えることも可能だというのです。

一方、内航船でも平均年収は約620万円と、決して低くない水準です。

「それでも普通に日本人の平均年収は全然超えてきます」とHくん。

フェリーなどの身近な船でも、十分に高収入を期待できる職業なのです。

 

興味深かったのは、フェリーの船長についての話でした。

「結構意外とフェリーに行く人が多くて、結構小さいときから乗っているので、自分もこのフェリーの船長として仕事をしたいという人が多いです」

外から見ると単調に思える宮島フェリーなどでも、「自分がうまく運転できなかったら乗客を殺すわけだから、やっぱり責任感の方が強いので、全然飽きない」という先輩の言葉があったそうです。

 

3. 外航船の魅力と過酷さ

外航船の魅力は高収入だけではありません。

勤務形態も特殊で、半年間乗船した後に3ヶ月間の長期休暇が取れるシステムになっています。

「使うときはないからこそお金が貯まってくる」とHくん。

乗船中は衣食住がすべて無料で、お金を使う場所もないため、自然に貯金が増えていきます。

 

しかし、その分過酷さもあります。

「外航船はやっぱり給料が高いので、結構お金はどんどん入ってくるけれど、やっぱり海賊もいるわけです」

海外の危険な海域を航行するリスク、半年間家に帰れない孤独感、そして言語の問題もあります。

 

「外航船に乗っても日本人は本当にその同じ船で、日本人は自分含めて大体2人、3人しかいません。あとは本当にフィリピンなどの人が多くて、共通言語は英語です」

だからこそ、海技士の資格だけでなく、TOEICなどの英語関係のスキルも必要になります。

「まず乗れないという世界で仕事をするわけだから、やっぱり大変さで言ったらもう尋常じゃない」とHくんも理解しています。

勤務形態のせいで体を壊して仕事を辞めてしまう人や、シンプルにしんどいから辞めてしまう人も結構いるそうです。

長期間の家族との離ればなれ生活、冠婚葬祭への参加困難など、高収入の裏には相応のリスクと犠牲があることも理解しておく必要があります。

4. 海技士資格への道のりと10年で独立も可能な世界

この道を進むために必要なのが「海技士」の国家資格です。

商船高専を卒業すると、3級海技士の筆記試験が免除され、実質的に3級資格を取得できます。

「それプラスアルファで在学中に2級とか取ったら、一気に外航船のチャンスが巡ってくる」とのこと。

外航船を目指すなら3級海技士(航海)以上、内航船なら4級以上が必要となります。

つまり、商船高専を卒業するだけで、十分に船乗りとしてのスタートラインに立てるのです。

 

私の知り合いにも、外航船に10年乗って船を降り、その後自分の事業を始めた人がいます。

この話をHくんにすると、「現実的に、外航船に乗れたんだったら、きついかもしれないけれど、本当にお金がどんどん入ってくるので、浪費せずに貯めて貯めて、もし本当にきつくなったら、貯めたお金がめちゃくちゃあるわけだから、そのお金を頼りにして外航船をやめて、例えば内航船とかで働くということが結構安全かつ現実的」と答えてくれました。

20代で年収1000万円を超え、しかも乗船中は支出がほとんどない。

10年間で相当な資産を築くことも十分可能なのです。

5. どんな人が商船高専に向いているか〜そして入学の現実〜

「こんな人だったら商船向いているのではないか」という私の質問に、Hくんは考え深く答えてくれました。

「商船に向いている人は、それこそ一つのことを本当にめちゃくちゃ頑張っているという人、ちょっと言い方が悪いかもしれませんが、オタク気質な人というのが向いていると思います」

確かに、船舶の運航には細かい技術や知識が必要で、それらを探求し続ける姿勢が重要なのでしょう。

 

さらに興味深かったのは次の視点です。

「僕もそうですが、例えば何か学校生活で何か嫌なことがちょっとあって、本当に一回新しい環境で頑張ってみたいという人にはすごくおすすめです」

 

そして最も印象的だったのがこの言葉でした。

「僕は具体的にもう将来船長になって、こういうことをしたいって目標があって来たけれど、意外と入ってみたら、何かしたいことはないけれど、この学校に来てみたかったという人が多いです」

普通の高校だと、いろんな仕事に就けるけれど具体的な目標は決まらない。

でも商船高専に来たら、船乗りしかなれないけれど、それになるための環境は完璧に整っている。

「何か具体的にしたいことが決まっていなくても、その学校に来て、自分が興味を持ったなと思ったら、その仕事に就けばいいという感じなので、自分が何かしたいことがあまり決まっていないなって思っても、来てみると全然あり」だと思うそうです。

ただし、ここで重要なことがあります。

商船高専は特殊な学校なので「あまり勉強は必要ない」と思われがちですが、実際には偏差値50前後の学力が必要です。

しっかりと勉強して平均点以上を取っておかないと、入学できるかどうか怪しいのが現実です。

Hくんも「正直、商船の実習系の勉強は頑張れるのですが、今ちょっと普通の普通科目の勉強がちょっと追いついていない」と言いながらも、中学時代にしっかりと基礎学力を身につけていたからこそ合格できたのです。

6. 進路選択の大切さ〜特殊な道だからこその価値〜

4回にわたってHくんの商船高専生活をお伝えしてきましたが、改めて感じるのは「特殊な進路だからこその価値」です。

一般的な大学進学と比較すると、確かに選択肢は限られます。

しかし、その分野での専門性は非常に高く、就職率もほぼ100%、そして高収入も期待できる。これは普通の大学では得られない大きなメリットです。

みんなと同じ道を歩む必要はありません。

大切なのは、その子にとって最適な環境で、最大限に能力を伸ばすことです。商船高専のような進路は、一般的な進路指導では見落とされがちです。

でも、適性のある生徒にとっては、これ以上ない選択肢なのです。

明確な目標、高収入への道筋、そして何より充実した学校生活。すべてが揃っています。

Hくんの成長を見ていると、進路選択において最も大切なのは偏差値や世間体ではなく、「その子がどれだけ生き生きと学べるか」だということを改めて実感します。

ただし、その道に進むためには相応の学力も必要だということも忘れてはいけません。

商船高専という選択肢が、より多くの生徒と保護者の方に知られ、そして適切な準備をして挑戦する人が増えることを願っています。


進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。