「なんでこんなことがわからないの?」
その言葉を口にしかけたこと、ありませんか?
親が子どもに。先生が生徒に。あるいは夫婦や友人の間でも。「自分には当たり前のことが、どうしてこの人にはわからないのだろう」と感じる瞬間は、誰にでもあるはずです。でも、もしかしたらその「当たり前」自体が、そもそも人によって違うものなのだとしたら──今日はそんなお話をしてみたいと思います。
こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。
今はゴールデンウィークのお休みをいただいていて、のんびり充電中です。こういう時間があると、普段なかなか手が届かない「学びの時間」に手が伸びます。1年ほど前から受講している放送大学で、心理学の授業をじっくり聞いているのですが、これが実に面白い。
知っていたはずのことでも、大学の講義として改めて聞いてみると、解像度がぐっと上がる感覚があります。「そういうことだったのか」という発見が、思いのほかたくさんあるのです。そんな授業の中に、なんとも興味深い話がありました。
「赤」は存在しない、かもしれない
認知心理学という分野があります。私たち人間が、この世界をどのように認知しているか、その仕組みを分析する学問です。
そこで聞いた話が、なかなか衝撃的でした。「色というものは、実は存在しないかもしれない」という話です。
私たちが「赤」「青」「緑」と呼んでいる色は、物体そのものに備わっているわけではありません。光が反射するときの波長を、脳が解釈して「色」として認識したもの──つまり、あくまでも頭の中で構成されたものに過ぎないというのです。
そう考えると、面白いことに気づきます。紫外線を「色」として認識できる動物や虫は、私たちとはまったく違う世界を見ているはずです。そして、もっと言えば──私の脳が「赤」と認識している色と、あなたの脳が「赤」と認識している色が、微妙に違う可能性だってある、ということです。
同じものを見ているようで、実は違う世界が見えているかもしれない。そう思って授業を聞いていたとき、ある生徒のことをふと思い出しました。
文字に色が見えた、あの子のこと
以前、ある女の子がこんな話をしてくれたことがあります。
「先生、私、文字に色がついて見えることがあるんです」と。黒で印刷された文字が、赤や黄色や青に見えることがある。文字に感情があるような気がする、と話してくれたのです。
正直、当時の私にはその感覚がまったくわかりませんでした。でも、自分には見えない感覚だからこそ、否定なんてできないとも思いました。「その感覚、大事にしてほしいな」と伝えたことを覚えています。
その後、彼女が教えてくれました。その感覚を持ったまま国語の問題を解くようにしたら、文章の点数がぐっと上がった、と。その子は今も独特の感覚を大事にしながら、自分なりの学び方を見つけています。
後から調べてわかったのですが、実はあの子の感覚には名前がついていました。「共感覚(シネステジア)」と呼ばれる現象で、神経科学的にもその存在が確認されています。文字や数字が色として見える「色字共感覚」はその代表的なタイプで、著名な作家ナボコフ──ロシア生まれの文豪です──や、ジャズの巨人デューク・エリントンも持っていたとされる感覚です。
もちろん、ここまで鮮明に感じる人は多くありません。ただ、程度の差はあれ、感覚の「ズレ」は誰にでもあるものです。たとえば文章を読むとき、なんとなく色や映像が浮かぶ感覚──そんな経験、ありませんか? そういった感覚の違いは、私たちの周りにも案外あるものだと思います。
あの子の話を否定しなくて、本当によかったと思いました。
「違う」を前提に、関わる
こんなふうに考えていくと、ひとつのことが見えてきます。
感じ方も考え方も、そして人格だって違って当たり前なのです。勉強の捉え方や内容の理解の仕方も、当然一人ひとり異なります。「なんでわからないの」と言いたくなるその瞬間、もしかしたらその子には、こちらとは違う世界が見えているだけかもしれない。
親子の間で、先生と生徒の間で、あるいは友達同士の間でも。「この人は私とは違う世界の見え方をしているかもしれない」という視点を持つことが、まず関わりの出発点になると思うのです。
一人ひとりの感覚を否定しない、それがMoveの出発点でもあります。
正解を押しつけるより、まず「あなたにはどう見える?」と聞いてみる。それだけで、関係はずいぶん変わります。
何かの参考になれば嬉しいです。
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進学空間Move塾長
宮脇慎也(Shinya Miyawaki)
27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。
8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。
その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。
1977年生。射手座。B型。
家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。


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