· 

書籍『運動脳』からADHDの記述について

『運動脳』という本

アンデシュ・ハンセンという脳科学者がいます。

 

『スマホ脳』という本が一世を風靡したので、

覚えている方も多いでしょう。

 

その彼の翻訳本で、

最近本屋さんで注目を集めているのが、

『運動脳』という本。

 

簡単に言えば、

「運動したら脳の活動が活発になり、

脳の発達も見込めるからみんな運動しましょう」

というもの。

 

ここ10年で20kg以上も体重が増えてしまった私には痛い本です。

 

狩猟採集時代のADHD

 

ただ、今日は運動の話ではありません。

 

 

その本の中で、興味深い一節を見つけたので、そちらのお話をさせてください。

 

それはADHD(注意欠陥・多動症)に関する記述です。

 

 

以下、簡単に要約します。

 

現代のお話しです。

ケニアで、縄文時代のような狩猟採集生活を送っている部族がありました。

 

ある時、その部族が何らかの理由で二つに別れたと言うのです。

 

一つは、そのまま狩猟採集生活を続け、

一つは、農耕を初め定住を選択しました。

 

 

文明の発展を思わせる一場面が現代においても観察できる貴重な局面です。

 

研究者たちからするとまたとない好機です。

彼らはその2つの部族の人たちの健康状態を調査したのです。

 

もちろん、その二つの部族それぞれにADHDの人が数人いましたが、

そうした諸々を含めての調査でした。

 

そして、その結果は驚くべきものでした。

 

狩猟採集部族の中のADHDの人は、同じ部族の人と比べても栄養状態がよく、

農耕部族に所属するADHDの人は、同じ部族で比べても栄養状態が悪いという調査結果が出たのです。



 

そう。

 

狩猟採集社会においては、

ADHDの人はその行動力から

生き残るための行動をより多く起こし、

生存確率を高めることができていたのです。

 

言うなれば、

現代社会において「発達障害」の中に分類される

ADHDの人というのは、

狩猟採集社会ではエリートと

言える存在だったのです。

 

他方で、

農耕社会においては、個人の行動力よりも組織力が大事であり、

忍耐力をもって一つの作業を集中して行うことを強いられます。

 

その状況では、

ADHDの人は能力を社会の中で発揮する機会を失い、

栄養状態が悪くなるというのです。

 

同じ特質を持ちながらも、

一方の社会ではエリートとして活躍でき、

他方の社会では辛い立場に立たされることがあると

その調査結果は如実に語っています。

 

 

活躍できる場所を選ぶ

 

ここからは私の私見です。

 

この本の中にもありましたが、

人間の脳は1万2000年から何も進化していません。

 

数千年前であればエリートと目される人たちが、

現在では「発達障害」というカテゴリーに含まれるのは、

彼らの問題ではなく、

社会が変わってしまったからです。

 

 

 

狩猟採集社会が農耕社会となり、

さらには工業社会、情報社会に移行していく中で

彼らの能力を発揮する機会を奪われ、

しかも、

じっと我慢することが美徳となる日本の中では

生きづらさを感じることが多い。

 

しかし、

色々なところに注意が向き、

自然と行動が多くなるというのは、

サバイバル環境においては秀でた才能です。

 

 行動力が命の実業家たちの中に

ADHDと思われる人が多いのも、

納得できるところがあるでしょう。

  

ちょっと変わった生活くらいが彼らにはちょうどいいのかもしれません。


結論として、

ADHDと呼ばれる人たちの一つの見方として、

彼らは環境が変われば、

大いに才能を発揮できる能力の持ち主たちということです。

 

そのためには、きっと周りの大人たちの理解が必要です。

 

それぞれの特質に合わせた場所に進むことを許容すれば、

きっと彼らの生きづらさは随分と改善されると思うのです。

 

様々な生徒と出会う職業にある私にとっても、

こうした研究があるということは心に留めておきたいと思い、

ここに記しておきます。

 

誰もが自分の特質を知り、それぞれが活躍できるフィールドに進んで欲しいですね。

 

 

なお、もちろん私は専門家ではありませんので、

詳しく知りたい方は『運動脳』を購入して読んでくださいね。