【インタビュー記事①】広島商船高専ってどんな学校?入学4ヶ月の生徒に聞いた驚きの教育内容

目次

画像はAIによって生成されたものです。実際の様子とは異なります。

1. 教え子との久しぶりの再会

こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。

先日、とても嬉しい再会がありました。小学生の頃から教えていたHくんが、広島商船高等専門学校に進学して4ヶ月。

久しぶりに塾まで顔を見せに来てくれたのです。

「先生、商船高専めっちゃ楽しいです!」と目を輝かせて話す彼の姿を見て、本当に良い選択をしたなと思いました。

 

せっかくの機会だからと、詳しくインタビューをさせてもらいました。

一般的にはあまり知られていない商船高専の実態について、生の声をお聞かせしたいと思います。

きっと「こんな学校があったんだ!」と驚かれる方も多いでしょう。

 

Hくんは小学生の頃から一生懸命勉強に取り組んでいましたが、決して勉強が得意というタイプではありませんでした。

それでも諦めずに努力を続け、中学では偏差値50を超えるまでになった生徒です。

でも私は、彼には通常の大学進学の道よりも、もっと輝ける場所があるような気がしていました。

そして今、その予感が見事に的中したのです。

2. 島の学校で学ぶ特別な教育

広島商船高等専門学校は、大崎上島町にある国立の高等専門学校です。

広島市内からは竹原港からフェリーで30分ほど。まさに瀬戸内海の美しい島で学ぶ環境なのです。

 

Hくんが在籍する商船学科では、他の高校では絶対に体験できない実習があります。

例えば、人が海に落ちた時の救助訓練として行う「カッター訓練」、船を岸壁に安全に停泊させるための「ロープワーク」、そして最も興味深いのが「船位測定」です。

 

「船位測定って何?最近はGPSがあるじゃない」と私も思わず質問したのですが、Hくんの答えに驚きました。

「海の上では嵐で通信障害が起きることが多いんです。GPSだけに頼っていたら、位置が分からなくなって死んでしまいます」

 

なんと、島の位置や航路標識を見て、海図に線を引いて自分の位置を特定する技術を、今でも現役で使っているというのです。

夜間は星座を見て方角を決める昔ながらの航海術も活用されている。

まさに伝統と現代技術が融合した、実践的な教育が行われているのです。

 

そして、この道を進む先には「海技士」という国家資格があります。

海技士とは、大型船舶(20トン以上)に船舶職員として乗り組む船長、航海士、機関長、機関士等が取得しなければならない国家資格で、船の大きさや航行区域によって1級から6級まで等級が分かれています。

外航船の船長を目指すなら3級海技士(航海)以上、内航船なら4級以上が必要となります。つまり、商船高専とは「船乗り」という専門職を育てる学校なのです。

3. 3年時の重要な選択と高収入への道筋

 「実習の内容を聞いているだけでワクワクしてきます」と話すHくんですが、商船高専には特徴的なシステムがあります。

3年生時に「航海コース」と「機関コース」に分かれ、前者は船長を、後者は機関長を目指すコースとなるのです。

 

ここで重要なのは、このコース選択が実習の成績だけでなく、数学や国語などの普通科目の成績も判断材料になることです。

現在45人の1年生のうち、航海コースを希望する生徒が35人、機関コースが10人という状況ですが、実際の配分は20対20程度になります。

 

Hくんは航海コースを希望していて、将来は船長になることを目標にしています。

そして、この道の先にある収入の可能性に私も驚きました。外航船(海外航路を運航する船)の平均年収は約920万円。

30代前半で1000万円を超える人も珍しくなく、船長クラスになると年収1500万円以上も可能だというのです。

 

「本当にそんなに稼げるの?」と私が驚くと、Hくんは嬉しそうに説明してくれました。

「船に乗っている間は衣食住がすべて無料で、お金を使う場所もないから、自然に貯金がたまるんです」。

なるほど、高収入に加えて支出も抑えられる。これは確かに魅力的な職業です。

4. 適性を見極めた進路選択の大切さ

「なぜ商船高専を選んだの?」という質問に対して、Hくんは「中2の夏休み後ぐらいから興味を持ち始めた」と答えてくれました。

知り合いの商船高専の先輩から詳しい話を聞いて、オープンスクールに参加したそうです。

 

当時、進路相談を受けた私も、最初は正直不安でした。

「本当にこの道で大丈夫だろうか」と。

でも、Hくんの話を聞いて、彼の性格や興味、そして何より目を輝かせて語る姿を見て、これ以上ない選択だと確信したのです。

 

勉強で苦労してきた経験があったからこそ、Hくんには実践的で専門性の高い道の方が向いている。

そんな直感が、今こうして現実となっています。

 

商船高専のような特殊な進路は、一般的な進路指導では見落とされがちです。

でも、だからこそ価値があるのです。

みんなと同じ道を歩む必要はありません。

大切なのは、その子にとって最適な環境で、最大限に能力を伸ばすことなのです。

 

今回のHくんとの再会で、改めて感じたことがあります。

成績だけで進路を決めるのではなく、その子の適性や興味、そして将来への可能性を総合的に見極めることの大切さです。

 

次回は、Hくんの寮生活について詳しくお話しします。

1日のスケジュールや友達との関係、そして意外な恋愛事情まで。

島での共同生活ならではの魅力をお伝えしたいと思います。


進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。