学習塾で定期テストの過去問を扱うべきではない理由

目次

1. まず知っておくべき著作権法違反の問題

こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。

今日は学習塾で学校の定期テストの過去問を扱うことについて、少しお話ししようと思います。

先日、塾選びでお父さんがいらしてくださったときのことです。

息子さんの周りの子どもたちは、学習塾で定期テストの過去問をもらって、それをひたすら繰り返している。

主要5科目はもちろん、家庭科などの実技教科でも、そのまま過去問が出るので高得点を取って内申点も4や5がつく。

でも、果たしてそれが子どもたちのためになるのでしょうか?というご相談でした。

全く同感です。

私の結論として、学習塾で学校の定期テストの過去問を取り扱うべきではないという立場です。

 

まず最初に申し上げたいのは、そもそも定期テストの過去問を学習塾で配ることは、著作権法違反の可能性が非常に高いということです。

著作権法第35条・36条では学校などでの複製について規定されていますが、学習塾は「営利目的の教育機関」として例外規定の対象外となります。

著作権専門家も西日本新聞の取材に対して「テストは著作物に当たり得るので、塾が許可なくコピー、配布するのは著作権法違反の可能性が高い」と明確に指摘しています。

この認識が業界内で薄いのが現状ですが、法的リスクを考えても明らかに問題があります。

学習塾業界全体で著作権への意識を高めて、法的リスクを共有する勉強会や研修の実施なんかも必要なんじゃないかなと思うんですね。

つまり、これは単なる法的問題ではなく、教育の根幹に関わる問題なのです。

2. 唯一認められるケースと、それ以外のデメリット

唯一、これだけはまあ認めなくちゃいけないかなと思うのが、本当にどんなに努力しても、学校の定期テストで残念ながら低得点で終わるという子の救済措置としてはアリなのかなという風には思わないこともないです。

それ以外のメリットを僕は思いつかないんですよね。

ただし、そういう生徒さんには、まず基礎的な学習習慣の定着から始めて、教科書の基本問題を徹底的に反復練習することで、過去問に頼らない基礎力向上を図るべきだと思うのは思います。

 

塾で定期テストの過去問をやると、保護者の方が思っている以上に得点が上がります。昔そういう塾に勤めていたので、よくわかるんです。

本当に簡単に上がります。

でも、そんなの本当の学力ではないですよね。

さらに問題なのは、過去問さえやっていれば得点が取れるという勉強方法では、高校になって自分で考える力や学ぶ方法を身につけていないということです。

高校で過去問がなくなったとき、勉強方法がわからなくなってしまう高校生を産む可能性が高いんですね。

それをするのが果たして学習塾の役割かどうかということです。

このように、表面的な成績向上は長期的には害になるんです。

3. 勉強を「ゲーム化」してしまう危険性

この点に加えて、もう1点思うのが、勉強というものがただの得点ゲームであるというメッセージを発することがあると思います。

子どもたちは、学校の定期テストの過去問をやることを悪いことだと思わないようになるんですね。

だって塾がそれをやっているからです。自分が信頼している大人が、そのプリントをくれて、それをたくさんやればいいんだよと教えてくれる。

そうすると子どもたちもそれが普通のことだと思ってしまいます。

よくわからないままとにかく過去問を覚えて得点を上げて、保護者の方もそれをよしとする。

子どもの方にも、それが倫理的に問題があることだということが伝わらないってことです。

果たしてそれはいいのかなと正直思います。

つまり、勉強本来の意味が失われてしまうということです。

4. 正攻法で学力を伸ばすMoveの取り組み

一方で、Moveでは過去問なんか使いません。

子どもたちの努力と着実な指導で得点を上げますという方法でやっているんですけども、この方法の方で、むしろ本当に学力が伸びるなと思っています。

偏差値が、うちの塾だと中1で50ちょっとだった子が中3になったら60を超えます、という話は何回かさせてもらっているんですが、これは多分定期テストの過去問を覚えさせる勉強法では実現できないんだろうなと思っています。

過去問を一切もらえない、とにかく正面から習ったことをしっかりと学習するというスタイルの塾、それに子どもたちが答えてくれた場合、そういう偏差値が出るんだなと考えています。

ですから、塾を選ぶときには、過去問を使用する塾なのか、そうでない塾なのかを確認してください。

これは塾を選ぶときの重要なポイントだと思います。

それによって、その塾の指導方針も大きく変わりますす。

Moveの門を叩いてくれる人は、定期テストの過去問に頼らず学力を上げることを目指す方々ですので、どうぞよろしくお願いします。


進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。