Moveの原点となった生徒の言葉

私の成績が良かったのは先生が頑張ってくれたおかげ

 

「あの時私の成績が上がったのは、先生たちが頑張ってくれたからだって、高校に入って気づきました」

 

 

 

 この言葉は、私が10年以上前に前職の学習塾に勤めていた頃、ある卒塾生に言われた言葉です。

 

 その頃、私は一斉指導塾の先生として広島市内の学習塾に勤務していました。

 

 当時の広島県で高校入試を突破するために必要なのは、何を差し置いても内申点(学校の成績)でしたので、とにかく定期テストで得点を取るための授業を組み立て、テスト対策では大量のプリントを準備し、長時間子ども達と向き合っていました。

 

その成果と子ども達の頑張りのおかげで、次々と生徒の成績が伸び、塾の評判もうなぎのぼり。

私が入社してから3年で塾の生徒も倍増し、私自身も生徒や親御さんから「生徒の成績を伸ばすいい先生」と評価を得ていたと思います。

私自身も自分がやっていることでみんなに喜んでもらえていることを嬉しく思っていました。

 

 そんなある時のことです。

 

 その前年に首尾よく第一志望の高校に合格し、塾を卒業していった一人の女生徒が、半年ぶりに塾に遊びにきてくれました。

 

 この子は中1の入塾当初の頃は勉強が苦手で、オール3くらいでしたが、塾の勉強を通じてメキメキと成績を上げ、第一志望の高校に進学していった自慢の生徒でした。

 そんな彼女と30分ほど談笑し、その中で何気なく「最近高校の成績はどう?」と聞いたのです。

 

 すると、さっきまで笑顔だったその子が、急に悲しそうな顔をし、高校に入って成績がどんどん下がっていったことを教えてくれました。

 

 その際に絞り出すように伝えてくれた言葉が冒頭のそれです。

 

「あの時私の成績が伸びたのは先生たちが頑張ってくれたからだって、高校に入って気づきました」

 

 この言葉を聞いて、私ははっとしました。

そして、大変申し訳ないことをしたと強い後悔の念に襲われました。

 

私たち塾講師が良かれと思ってやっていたことは、本当に彼女の力になっていたのか。

実は彼女達の「自ら学ぶ力」を奪っていったのではないか。

素直な中学生達が大人を信じて、取り組んだその努力は、自らの生きていく力に変換される形だったのか。

塾の先生の自己満足だったのではないか。

私は目の前の成績「のみ」を追いかけ、彼女の学力や学ぶ力を本当にあげようとしていたのか。


なんて罪深いことをしていたのだろう。

 

そんな自責の念が湧き上がってきたのです。

 

その時の言葉ををきっかけにして、真剣に「生徒の学ぶ力」を伸ばす塾を作ることを考えるようになりました。


そうして2013年3月に開業したのが「進学空間Move」です。