解の公式は暗記でいい? 説明し合うMoveの数学授業

「エックスイコール、ニエーブンノ、マイナスビー、プラスマイナス、ルートビーノニジョウマイナスヨンエーシー」

聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。中学3年生で習う、二次方程式の解の公式です。覚えなくて大丈夫です。今は雰囲気だけ感じてください。

初めてこれを聞く中3生にとっては、ほとんど呪文のような言葉です。でも、この呪文に数値を当てはめれば、どんな二次方程式でも答えが出てくる。まさに魔法の公式です。

ただ、ここで大きな差がつきます。「呪文として数値を当てはめればいい」という感覚のままなのか。「どうしてこの公式が成り立つのか」をちゃんと理解してやっているのか。この違いは、思っている以上に大きいのです。

こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。今日は、Moveで毎年行っている「解の公式を導く授業」の話をします。

なぜ、わざわざ公式を導き出すのか

解の公式を導出できるようになること。これは数学にとって、とても大切な感覚を養うことだと考えています。

だからMoveでは毎年、ここに1時間から2時間を割きます。解の公式を、自分の手で導き出せるように説明します。そして、お互いに自分たちで説明し合うのです。

冒頭の写真は、まさにその様子です。ちなみにこの日はAクラス・Bクラスに分かれているうちのBクラスの生徒たちでしたが、それでもこうした授業がしっかり成り立ちます。

難しいのに、なぜか楽しそうなんです

この様子を見ていて、思ったことが2つあります。

ひとつは、子どもたちがとても楽しそうだということ。

解の公式の導出は、中3生にとって簡単なことではありません。むしろ、これまでとは段違いに難しいレベルの話です。それでも、お互いに説明し合おうとするその姿は、本当に楽しそうなのです。

ある子は、手を動かしながら「ここがこうなるから、こっちに移項して」と、隣の子に一生懸命説明していました。うまく伝わらなくて言い直したり、ノートに書いて見せたり。その試行錯誤そのものが、楽しそうなのです。

きっとこの授業を経て感覚をつかんだ子は、もう数学のレベルがひとつ変わっているだろうと思います。感覚が変わる。勉強がつまらないと思うことも、減っていくだろうと思います。

自分の力でクラスメートに説明しきった子が「なんか、うれしい」と言っていたのが、とても印象的でした。何度も「なんか、うれしい」と。あの言葉が、すべてを物語っている気がします。

基礎はできるのに、応用ができない子へ

「基本はできるのに、応用になると解けない」。こう嘆く子や親御さんが数多くいます。実は、そういう子の多くが、こうした公式の成り立ちを理解していません。自分が何をやっているのかを理解しないまま、解き方だけを覚えているのです。

そういう勉強の仕方をしていれば、当然どうなるか。その公式を、どのような場面で当てはめればいいのかがわからない。公式から外れた状況を整理することもできない。そうして、解けなくなるのです。

ただ、考えてみてください。解の公式の導出が、応用問題であるはずがありません。公式の理解という意味では、基本中の基本に含まれます。

つまり、こうも言えるのです。「基礎はできるのに応用はできない」という子の多くは、実はこの基本中の基本を、おろそかにしているのだと。

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「人に説明する」ことの、本当の力

もうひとつ思ったことは、教育学や心理学でよく言われることです。

友だちに何かを教えているとき、実は自分が一番よくわかった。そんな経験はないでしょうか。物事をしっかり記憶し、理解しようとするとき、人に説明することは非常に有効な手段です。これを「精緻化記憶」と呼びます。

人に説明するためには、その周辺の知識まで理解していなくてはいけません。整理して話そうとする力も必要になります。そうしたプロセスを経て脳に刻まれた知識は、そう簡単に忘れません。

もし忘れたとしても、自分で導き出せる。一度自分の手で作り上げた公式は、たとえ度忘れしても、その場でもう一度作り直せるのです。この安心感は、丸暗記では決して手に入りません。

ちょうど昨日、SNSである塾の先生が嘆いていました。「解の公式がどうして成り立つのか知りたい?」と生徒さんに聞いたら、「いや、結構です。大丈夫です」と笑われてしまったそうです。その先生も「まあ、そんなものだよね」という感想でした。

その気持ちも、わからなくはありません。導出を教えるのは、手間も時間もかかりますから。それでもMoveがやめないのは、ここを飛ばした先に「基礎はできるのに応用ができない」がやってくると知っているからです。だから、非常にもったいないと思うのです。

説明しきるところまで持っていくことができたら、あの「なんか、うれしい」とつぶやいた子のような感覚が手に入るんですよ。そう伝えたくなります。

解の公式の導出、ぜひ楽しく、しっかりとマスターできるように、お互いに説明し合ってみてください。数学に対する感覚が、本当に変わります。

Moveの一幕をお届けしました。なお、明日は学校選びの会があります。皆様のご来場をお待ちしております。


進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。

 

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